
養育費の法律が改正されたって本当?
2020年4月に改正民事執行法が施行され、養育費に関する内容も改正されました。これは簡単に言えば、今までよりも未払い養育費の請求がしやすくなったということです。
この記事では、法改正によって変わった制度の内容やポイントについて解説していきます。

具体的に制度を利用する場合の方法についても書いていくよ!
養育費の未払いに悩んでいた方や、これから養育費の取り決めをする方は参考にしてみてください。

書いた人
離婚調停経験者のりりさんです。元シングルマザー。現在は再婚して2児の母をしているママブロガーです。離婚や再婚に役立つブログを書いています
法改正で何がどう変わった?

今まで養育費はいわゆる「逃げ得」と言われていました。
というのも、相手の具体的な財産がわからないと差し押さえをするのが難しかったことや、相手が財産を隠した場合の罰則もほとんどなかったことなどが理由です。

養育費を支払わないことへの罰則もないよ!
そのため、養育費を受け取っているシングルマザーの割合も24.3%と少なく、4人に3人は養育費がもらえていないのが現状です。
参照:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果|厚生労働省
また、公正証書があれば完璧!と思って離婚をしたのに、実際には公正証書では出来ることが限られており、養育費の未払いにはまったく役立たなかったいう人も少なくありませんでした。
そうした問題点をふまえて2020年4月に改正民事執行法が施行され、「財産開示手続の見直し」と「第三者からの情報取得手続の新設」が行われました。
これをざっくりまとめると、
ということになります。
これにより、今までは諦めていた未払い養育費の請求がしやすくなり、反対に支払う側から見ると養育費の逃げ得がしづらくなりました。

改正された内容について順に解説していくよ!
1、相手の財産が探しやすくなった

養育費の未払いを請求するには、強制執行をするのが効果的であり、最終手段とも言えます。

強制執行は、養育費などを支払わない人に対して、その人の財産(給与や預貯金など)を差し押さえ、その財産の中から強制的に支払いをさせる裁判所の制度のことだよ!
強制執行をするには、相手の財産を把握する必要があります。この財産については、未払いをされている側(子どもを育てている側)が調べなければいけません。
相手の預貯金のある銀行や勤務先を知っていれば問題はありませんが、それが分からない人も少なくはありません。そういった場合に出来るのが、「財産開示手続」です。
今までも財産開示手続の制度はありましたが、裁判所の呼び出しに従わなかった場合の罰則も軽く、嘘をつくことも簡単にできたため、財産を隠したり出頭を拒否する人も少なくありませんでした。

人でなしには無意味な制度だったみたい…
そこで新設されたのが、「第三者からの情報取得手続」です。
第三者からの情報取得手続とは
第三者からの情報取得手続とは、裁判所を通じて相手の財産の情報を銀行、法務局、市町村などに確認し、本人の同意なしで照会することができるといったものです。
裁判所に申し立てをして認められると、裁判所が銀行や法務局などに相手の口座や不動産の情報を提供するように命令します。これによりあなたに相手の財産情報が伝えられ、その所在を把握することができるようになります。
具体的な例で見ると、
ということになります。
預貯金について第三者からの情報取得手続を利用する注意点としては、口座のある銀行の予想がまったく付いていないと、情報を取得するのが難しい点があります。
ですが、第三者からの情報取得手続は何度でも申し立てをすることが出来ます。そのため、ゆうちょ銀行に口座はなかったから今度は楽天銀行を調べてみよう!といったことも可能です。

諦めるのはまだまだ早いよ!
今までは「どこかに何かあるはず」では出来なかった強制執行ですが、法改正により手続きがしやすくなり、上手くいく可能性が高くなったといえます。
2、相手の勤務先が調べやすくなった

一般的に、給与は差し押さえの対象となることが多いです。理由としては、勤務先が分かれば通常は差し押さえが出来るため、銀行口座や不動産などよりも情報の把握がしやすいからです。
ですが相手が財産開示手続で働いていないと嘘をついたり、転職して新たな勤務先が分からない場合は、給与の差し押さえが出来ませんでした。
しかし、これも法改正による「第三者からの情報取得手続」を利用することで、勤務先の情報を把握しやすくなりました。
給与については裁判所を通じて市役所や年金事務所に照会をすることで、相手の勤務先の情報を知ることができます。住民税や年金の情報をもとに調べるため、相手が転職を繰り返していても現在の勤務先を調べることが可能です。
注意点としては、相手の住んでいる市町村が分からないと手続きが出来ないことです。この場合は、「住民票の除票」や「戸籍の附票」を取り寄せることで調べられる可能性があります。
3、財産を隠した時の罰則が強化された

前述した通り、養育費を支払わない場合の罰則はありません。ですが、財産開示手続で虚偽の申告や出頭の拒否をした場合の罰則というものがあります。
改正前の罰則は「30万円以下の過料」でしたが、法改正により「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰になりました。つまり今後は、財産開示手続で嘘をついたり裁判所からの呼び出しを無視すると前科がつく可能性があるということです。

法改正による「財産開示手続の見直し」のひとつがこれだよ!
今までの罰則は行政罰(=前科はつかない)だったため、養育費を払うよりも裁判所に30万円を払って済ませるという人でなし野郎も少なからずいましたが、前科がつくとなれば拒否する人は少なくなるでしょう。
これにより相手も財産開示手続に応じやすくなったため、「第三者からの情報取得手続」をしなくても強制執行が出来る人も多いと思います。
4、公正証書が有能になった

ここまでに18回も書いてきた「財産開示手続」という言葉ですが、今までこの財産開示手続を利用できる人は、離婚調停や離婚裁判などの裁判所手続きで養育費についての取り決めをした人に限られていました。
つまり、公正証書で強制執行は出来てもその前の財産開示手続を利用することはできず、実質的には公正証書があっても強制執行が出来ないといった人が少なくありませんでした。

公正証書があれば大丈夫!とか言ったの誰~!
これが法改正によって、「養育費が未払いになったら強制執行をする」と公正証書で取り決めた人であれば、財産開示手続を利用することができることになりました。これも改正法の「財産開示手続の見直し」のひとつです。
これから離婚する人はどうする?
養育費の取り決めは、離婚協議書や口約束ですることもできます。ですが、ここまで読んでくれた方であれば、未払いになった際に「タイヘンメンドークサイコト」になるのは十分お分かりだと思います。
これから離婚をするのであれば、離婚調停をするのもひとつの方法ですが、協議離婚で話がまとまりそうなのであれば、強制執行認諾文言付公正証書を作成することがいいと思います。
この一文があるのとないのとでは、公正証書の意味も大きく変わってきます。
すでに離婚しており公正証書がお手元にある方は、
甲は、本契約に規定する金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨認諾した。
というような一文があるか確認してみましょう。

これがないと離婚協議書と大差がない場合も!
公正証書は、離婚後であっても変更が可能です。相手の合意が必要なため難しい場合もありますが、強制執行認諾文言付に変更したい場合は元配偶者に打診してみるのもいいと思います。
養育費の法改正のまとめ
養育費に関する法律は、
といったように改正されました。
それでも確実に養育費を払ってもらう方法はなく、まだまだ完璧ではありませんが、国も養育費の問題について動き始めてくれているのではと思います。
逃げ得と言われていた養育費問題ですが、これからはシングルマザーのみなさんが泣き寝入りしなくて済む世の中になっていってくれたらいいなと思います。

子どもとママが楽しい毎日を送れるように応援しています!
本日はここまでです。お読みいただきありがとうございました。